真田短編集


契約





まぁ、下らん昔話だ。
昔、ある所に母親がいた。彼女には大切な娘が居たのだが、流行り病か…不慮の事故か、
とにかくその娘が幼くして亡くなってしまった。
嘆き悲しむ母親の前に悪魔が現われた。
「お前の命を差し出せば、娘を生き返らせてやろう」
母親は直ぐ様その契約を悪魔と結び、娘は蘇った。
歓喜の涙を流す母親。悪魔が早速彼女の魂を頂こうとすると母親が言った。
「この子はまだ幼く、まだ一人では生きていけない。
 それでは私はなんのために契約を結んだのか解らなくなってしまう。
 どうか、この子が物心付くまで待ってはくれないか。
 その時が来れば私は直ぐ様貴方に命を差し出しましょう」
母親の言う事ももっともだと思った悪魔は再び現われる事を予言し、姿を消した。
数年後、娘は花のように美しい少女に成長する。
「アレも大きくなった。そろそろ良いだろう。命を頂くぞ」
ある夜、悪魔が母親の前に再度現われる。今度こそ、と息巻く悪魔。
だが、彼女はこう言った。
「貴方が待ってくれたおかげで娘は成長し、私はそれを見届ける事が出来た。
 だが、娘はたいそう美しくなり、縁談の話が山のように来るのだ。
 私は母親として、娘を幸せにしてくれる婿を選ばなくてはならない。
 あの娘が幸せになるのを見れないのでは何の為に契約を結んだのか解らない」
まぁそれもそうだと思った悪魔は、数年後訪れると予言し、去った。

しかし娘が結婚した後は、今度は孫の顔を見るまでは…と言われ、悪魔はまた引き下がってしまった。

その後、娘夫婦には玉のような可愛い子が生まれすくすくと育っていた。
もう良いだろうと、再び母親を尋ねようとした悪魔は愕然とする。年を重ねた彼女は既に他界しており、
その命は天に召された後だったのだ。

な、下らん話だろ?だがこの話には教訓が一つあってだな、約束の期限を一度ずらすと、
その後もズルズルと伸ばされて最後にゃ煙に巻かれちまうって事なのさ。
だから期限は守ってもらわなきゃなぁ。俺は悪魔みたいに優しかないぞ。
借りた金、返済日は契約通りきっちり今日だ。
ミミ揃えて払ってもらおうか?







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