Who?What?Day小説 前編
      ↑サムクテゴメンナサイ






決戦前日

 

 

 3月13日。暖冬の名に恥じぬ、暖かい小春日和の午後。
桜の花は満開、穏やかな日差しがさんさんと降り注ぐその日…。

 怪しげな集会を開く怪しげな集団があった。 

 暗幕で覆われた窓。陽光は一筋も差さず、部屋の中は真昼というのに不気味に薄暗い。
部屋内の明かりはワット数の少ない一つの電球のみ。
切れかけているのか、ジジジジと小気味悪い音を立てている。

 そして、円陣を組み鎮座する異様な格好をした十数人の男達。

 その格好は正に異様であった。
頭全体をすっぽりと黒色の三角頭巾が覆っている。
目の部分だけ小さく穴が開いているが、中の人間の判別はほぼ不可能であろう。
身体には同色のローブを纏っていた。
その怪しげな風体はかの過激集団KKK・クークラックスクランを思い起こさせる。
が、この集団それとは全く無関係である。第一そうご大層な意志など掲げちゃいない。

 白人至上等もってのほか。彼等の中身は黄色人種だし。
詳しく分類すれば…国籍・日本人、職業・高校生、性別・男。

 所属団体名・通称KKK。

 正式名称・孤独高校生結社。
年齢=彼女無し!女友達皆無!クラスメイト異性との会話、挨拶すら無し!

 異性の寄り付かぬ不幸の星の下に産まれた、モテない男達。

 ここはそんな彼等が集い、傷を舐めあう場所である………。

 

 一人の男が一同の前に歩み出て、号令をかけた。

「よし、みんな集まったな!これよりKKK定例集会を行う。全員、きをつけぃ!」

 ざざっ、と全員直立不動の体制になる。この男、KKKの総統。集団のトップに君臨する者だ。
全員の顔を見回しながら彼は演説を始めた。

「さて、諸君。丁度一ヶ月ぶりの集会だ。
我々にとって先月は……狂気の!地獄の!悪魔の!所業としか思えぬあの、忌まわしきイベントがあった!
耐え抜き、今日この場に全員が…全員が無事に集まった事を私は非常に嬉しく思う。
さぁ、今一度…先月のスローガンを叫ぼうではないか!今日は勝利の宣言として!」

 総統の言葉に続き、拳を天に突き上げ野太い声で集団は叫ぶ。

「バレンタインなんか」
『怖くない!』
「もらえなくても」
『気にしない!』
「耐え抜け!」
『バレンタイン!』
「くたばれ!」
『バレンタインっ!』
誰からともなく拍手が沸き起こり、社員達(結社構成員・略して社員)はお互いの健闘を称えあった。

 肩を叩き会う者、ハグしながら号泣を始める者、様々である。

「静粛に、静粛にっ、諸君!」
総統が声を張り上げ、慌てて社員は再び直立不動の体制に戻る。

「さて…今日集まってもらったのは…他でも無い。
明日、我々が『あの』イベントにどう立ち向うか、という事を討論するためだ」
「失礼ですが総統閣下!」

 総統の言葉を遮り、一人の社員が素早く挙手した。

「何だね、ナンバー8?」
「はっ!我々は既に『あの』イベントには勝ったも同然ではないでしょうか!」
「ほう?」

 面白そうに顎を撫でる総統に、社員8は誇らしげに胸を張り宣言した。

「本気と書いてマジと読む、マジチョコはおろか、
返す義理一つ無い我々にとってホワイトデー等、恐るに足らずです!」
「そうだ、よく言った8!」「その通りだぜっ!あんなの菓子屋の陰謀だ!」
やんややんやと周囲から歓声が沸き起こる。
「果たして、そうかな君達?」

 総統の後方に控えていた男が、一歩前に出る。

「マジチョコはおろか、返す義理一つ無い?本当にそう思うかね?」
『副総統閣下!?』

 社員達の声がハモった。
発言したこの男、結社のナンバー2的存在である。

「そ、それはどういう意味ですか?」

 困惑した社員8に、副総統は厳しく言い放った。

「ナンバー8君。君は嘘をついている!」

 びしっと指を突きつけられた社員8は真っ青な顔で後退りした。
「そ、そんな副総統閣下、俺は本当に貰ってなんかっ!」
「貰っただろう、ナンバー8」

 静かに総統は社員8に語りかけた。

「君は貰ったはずだ。ナンバー8だけじゃない。諸君の殆どが貰っている筈だ、返すべき義理を」

 思わせぶりに一拍間を置き、総統は言った。

「お母さんから、貰ってるだろう?諸君」

 あ!と思い出したかの様に口を押さえた社員8に副総統は厳しく諭す。

「ナンバー8君。確かに、お母さんからのチョコなんて我々、ぶっちゃけ嬉しくもなんともないさ。
ああ、今年もお袋からしか無いのか。そう思いながら、いつしか貰うのが当たり前になる。
むしろ『はら、アンタにもあげるわよ。来年は彼女から貰えると良いわねぇ〜』なんて皮肉まで付いてくる!
ってかそのチョコ、マックスバリ ○ーの特売299円じゃねーか!
なんでそんなのに返さなきゃいけないんだよ!とか考える。
でもな、一応貰ったからには返さなきゃならんのだ!」

「副総統、ちょっと私情挟みすぎ…」

 総統に窘められ、彼ははっと我に返ったらしい。ゴホン、と軽く咳払いをした。

「ま、まぁ兎に角。
義理チョコならぬ義理返しだ、曲りなりにも日々の掃除・食事・洗濯をこなし我々を育ててくれている母親。
キャンデーの一つでも返す義理は十二分にあると私は考える」 

 しゅん、と社員8は首をうな垂れた。

「さすが副総統閣下だ…。なんてお優しい考えだ。
俺、今年はお袋にちゃんと返します!今まで貰ってばっかだったから…あぁ姉貴からも貰ったっけ……」

 「俺も貰ったなぁ」 「俺も返すよ!」周囲からも賛同の声が続いた。

「うむ。忘れがちな家族チョコ。でも義理返しは忘れずにな!ちゃんと値段は三倍返しだ!」

『はい!総統閣下!』

 社員全員が朗らかに返事をした。

 

…まぁ、君は忘れてはいなかっただろうがな。ナンバー13番」

 いきなり総統に名指しされ、社員13はびくっと身体を硬直させた。

「ななな、なんの事ですか、かかか閣下!?」
「噛みまくりだ、ナンバー13番。ってか…今パソコン入力で 噛みまくり→上間久里と
変換されてちょっとびびった。なんか萌えキャラっぽい名前じゃないか…フフフ」
「総統閣下、いま関係ありませんからソレ」

「あ、うん、そうだね副総統。ゴメン。えー話を元に戻そう。えーと、ナンバー13番」

 咳払いした後、総統はビシッと社員13を指差し叫んだ。

「君は、チョコを貰っただろう、3つ年下の妹から!しかも、血の繋がっていない妹だ!」

 

『なんだって〜!!』

 

 社員一同が驚愕する。

「お、おい、13!お前、血の繋がってない妹なんか居たのかよ!」
社員13に詰め寄っているのは、彼と仲の良い社員5である。
「なんで、何で言ってくれなかったんだよ!
あ、もしかして…お前親父さんが昨年再婚したって言ってたよな…。その時か!
なぁ、なんで黙ってたんだ!」

 胸を掴み上る勢いの社員5を振り払う社員13。

「言えるかよっ!だってお前、超が付く妹属性じゃないか!
生涯最良ゲームがシスタープリンセスなんて男に…」

 血の繋がらない妹。ソレはメイドに次ぐ男の夢(断言)社員13は絶叫した。

「例え友であろうとも、いや友だからこそ、お前なんかに俺の妹は渡せねぇぇぇ!」
「ナンバー13君。君は男の友情より、血の繋がらない妹を選んだ訳かい?」

 副指令をきっと睨み、何かを吹っ切った様に社員13はニヤリと笑う。

「ああ、副総統閣下。だって、毎朝起こしに来てくれるんだぜ妹。お兄ちゃん、朝だよっ
って!たまに滅茶苦茶不味い弁当作ってくれたりさ。指絆創膏だらけにしながら…不器用な癖に。
お兄ちゃんお兄ちゃんって、あんなに懐いてくれて。
俺、あんなにあんなに屈託無い笑顔、女の子に向けてもらうの今まで無かったから……」
「あーそれ位にしたまえ、ナンバー13。ナンバー5が血の涙を流して泣き崩れたから」

 総統は哀れむ眼差しで床の社員5を見つめた。
彼はうわ言の様に「毎朝…起こしに…お弁当…絆創膏…いーなぁ、いーなぁ…」と呟いていた。
ぼたぼたと真赤な涙が床に水溜りを作っている。

「総統、認めてやる俺は…貰ったよ!チョコレートケーキさ、妹手作りの!
俺はもう孤独じゃない!だから今日をもって、俺はKKKを脱退――」

 社員13の脱退宣言を総統は遮った。

「まあそんなに早まるな、ナンバー13、リアル僕は妹に恋をする、か。禁断、それもまた良かろう。
だがな、ナンバー13。妹さん、彼氏居るよ?」
面白そうに顎を撫でつつ総統にさらりと宣言され、ぎしりと社員13は動きを止めた。
「そ、んな、馬鹿な」
「馬鹿は君だ!副総統」

 パチリ、と指を鳴らす総統に、軽く頷いてから副総統は徐に一枚のB5用紙を取り出した。

「ナンバー13君。君は知らんだろうが、妹さんには幼馴染の彼が居る。
早熟だねぇ、小学校から付き合っているらしいよ?
君にお弁当を作った日は…9月11日と同月15日、それから……」
「なんで、なんでだ?全部有ってる…」

 呆然と呟く社員13に、副総統は気の毒そうに肩を竦めた。

「何、簡単な事さ。妹さんの通う学校にはわが団体の支部が有って、詳細を報告してもらったんだよ。
君にお弁当を作った日。それはね、妹さんが彼氏に手作り弁当を渡した日と一致してるのさ。
因みに、彼もチョコレートケーキを貰っている。12号サイズの」

 がくん、と社員13の口は顎が外れんばかりに開かれた。

「ああ、君が貰ったのは5号サイズだっけ?想いが形の差で出たんだろうか?
妹さんの彼氏だが、とある名家のお坊ちゃまらしい。容姿端麗、成績優秀、スポーツ万能との事だ」
「ヤムチャとスーパーサイヤ人並みの隔たりがあるな。我々とその彼氏君とは」

 なにせこちらは年齢=彼女無し!女友達皆無!クラスメイト異性との会話、挨拶すら無し集団である。

「じゃあ、あの絆創膏も、チョコも、全部全部、その男の為だったのか…俺は、ついで…」

 がくり、と地面に四肢を付く社員13。

「さて、ナンバー5。彼の処分はお前に任せよう」
「処分、ですか?」

 総統の言葉に、社員5は驚いて顔を上げた。

「うむ。独りよがりの考えで友を見捨て、妹を取ろうとしたKKKの信念の風上にも置けぬ輩だ。
脱退処分にするなり、何らかの刑を執行するなり、お前の考えを尊重しよう」

 社員5は困ったように友を見つめた。

「確かに、妹紹介してくれなかったし、お前なんか呼ばわりされたし…」

 一言呟く度に、社員13の身体がビクビク震えた。

「でも、俺は許したい、です」
「ナンバー5!」

 感謝の眼差しで自分を見つめる社員13の手を取って社員5は爽やかに微笑んだ。

「こいつだって、今、たった今失恋したばっかだし、辛いだろうから。だから、KKK、脱退しないよなお前?」
「ああ、ああ!許してくれるのか、ナンバー5!?」
「許してやるさ!でもちゃんとお前の妹、今度紹介しろよ?」
「馬鹿、野郎、あいつ…彼氏居るんだぜ?」
「いいさ、一緒に失恋しようぜ?」
「お前、本当に馬鹿だっ!」
「ふん、お前の妹は俺の妹さ〜!」
「お前ジャイアンだなぁ〜ナンバー5!」

 がっしり肩を抱き合う二人。周りの社員から麗しい男の友情に拍手が沸き起こったのだった。


 辺りの興奮が収まったのを見計らって、一人の社員が静かに挙手をした。

「総統閣下、社員の皆さん、僕、僕、実は貰ったんです、義理チョコ!」
「11がか?」「大人しくて優しいナンバー11なら有りえるぞっ!?」

 ざわざわとどよめく一同。

「同じクラスの、Vから…」

 しーん、と今度は水を打ったように静かになる。

「ナンバー11君。君と同じクラスのVって、あの、Vかい?」

 気の毒そうに尋ねた副総統に、社員11は悲しげに頷いた。

「あの、性格かつ容姿までパーフェクトに酷い…Vからです」

 哀れむ様なため息があちこちで漏れる。

「彼女の事だ。
一個100円のチョコを突きつけて、お礼は30倍返し!とか無理難題を押し付けられたんだろうナンバー11?」
「いいえ、総統閣下。一個100円ならまだマシでした」

 静かに首を振る社員11に、副総統が思わず叫んだ。

「まさか、伝説の史上最低義理ランク、一個10円チロルチョコか?」
「いいえ、副総統閣下…違います」

 三角頭巾の奥のつぶらな瞳を潤ませ、社員11は語り始めた。あの、屈辱の出来事を。

「僕、僕、その日…掃除当番で、教室に箒をかけようとして…放課後、Vと友達数人がずっと残ってたんです。
なんかお菓子食べながら、雑誌見てずーっと喋ってて…掃除、出来なくて。
だから、ちょっとお願いしたんです。僕、大人しいし泣き虫だけど、頑張って…
ごめん、ちょっとだけ退いてくれるかなって、箒急いで使うから、その間ゴメンって…そしたら、そしたらVが…」
涙腺にたまった涙をゴシゴシ擦りながらつっかえつつも話す社員11に、周りは必死でエールを送る。
「頑張れ11!」 「男の子じゃないか、泣くな!」
「は、はい。皆さん、ありがとうございます。
あの、僕がどいてって言ったら、V…すっごい怖い顔をして…あの人ただでさえ怖い顔なのに…。
はぁ?うるさいよ、バーカって言われて…。僕、泣きそうになって。
そしたらVの友達がもう帰ろう、とか言い出してくれて、それでVもしぶしぶ席立って…。
その時、もってたお菓子、麦チョコなんですけど、それ、僕の顔に一粒、ぶつけて来て…」

「まさか…」

 驚愕の声で呟いた総統に、社員11は頷いた。

「ウゼーんだよ。お前にやる義理チョコはこれで十分だ、バーカって。
…しかも、本命じゃねーから勘違いすんなよ、キモイからって言われちゃって。
…悲しくて、悔しかったけど、でも僕これまでの人生でお母さんとお婆ちゃん以外からチョコ貰ったこと無かったし、
何でか知らないけど、言っちゃったんです…ありがとう、って!!
僕の、馬鹿っ!…貰った義理は返さなきゃいけないし…でも、麦チョコ一粒のお礼って僕、僕どうしたらいいか…」

 泣き崩れる社員11。他の社員達も滂沱の涙を流している。

「く、悔しいなぁ、くそぉ、11をこんなに傷つけやがって」
「麦チョコ一粒?なんて卑劣漢だっ!」
「これがツンデレな学級委員Iさんならまだ萌えようがあるのに…Vじゃあなぁ…」
「なんという屈辱だっ!ナンバー11君っ!」

 社員11の細身の身体をがっしりと抱きしめ、副総統も号泣している。

「そんな屈辱を受けて尚、お礼まで言った優しい君は素敵だ!なんてジェントルなんだ!」

 肩を掴み、泣きぬれた瞳を見つめ副総統は宣言した。

「そんなVに、義理返しなどしなくても良いっ!なぁ諸君!」
「そうだそうだ!」「悩む価値すらねぇ性悪女だ!」
副総統に対する賛同の声が次々と上がる。が、静かに総統がそれを制した。

「まぁ、待ちたまえ諸君」
『総統閣下?』

 ハモる社員達を見回し、仰々しい身振り手振りを交えて総統は演説を開始し始める。

「ナンバー11が受けた屈辱は、察して有り余りまくる。
麦チョコ一粒、顔面にぶつけられ、尚且つ本命じゃないから誤解すんなとのたまうV!
まさに悪魔!百鬼夜行全員分の妖魔の所業だ。
それに対して、憤慨するでもなく優しくお礼まで言ってのけたナンバー11。なんて出来た男なんだ君はっ!
諸君、今一度彼に賞賛の拍手を贈ろうじゃないか!」

 巻き起こる割れんばかりの拍手を受け、社員11は照れたように頭を掻いた。

「だがな、お礼をせずに敵前逃亡だけはすべきではないぞナンバー11」
「ちょっと待ってください、総統。まさか、義理返しをしろと言うんですか?ナンバー11君に!?」

 びっくりしたように聞き返した副総統を、だが総統は涼やかに肯定した。

「ああ。返すべきだ、ここで何の報復もしなければ、ナンバー11は優しいがそれだけの男になってしまう。
受けた義理は返す、受けた屈辱も返す、且つ値段も三倍返し、そんな完璧な報復行為を行わなければ
ナンバー11は一生麦チョコを見る度に屈辱的な思いに囚われ続ける…。
私は総統として君にそんな思いをさせたくないのだ。ナンバー11、秘策を与えよう」

 総統は黒いローブの懐から、何やら黄色い袋を取り出し社員11の手に握らせる。

 社員11は呆気に取られた顔でその袋を見つめ呟いた。

「これは…スッパイマン?」
うむ。と総統は頷いた。
「私の今日のおやつだ。それを…君に託す。Vにくれてやるんだ、一粒だけ!」

 おおおおっ!社員から驚愕の声が上がった。

「そうか、そういうことですか総統閣下!」

 副総統が感激に目を輝かせながら叫んだ。

「麦チョコ一粒の単価に対してスッパイマン一粒の単価は確実に三倍以上!
しかもスッパイマンを一粒のみとは何たる屈辱!素晴らしい報復です閣下!」

「ああ。それをVにくれてやるんだナンバー11」

 びしっ、と己の額を指差し総統は言った。

「奴の眉間に、ぶつけて来たまえ!男になるんだナンバー11っ!」
「頑張れ、11っ!」「そうだ、男を見せようぜ11っ!」

 数々の自分へのエールを受け、じっとスッパイマンを見つめ考えていた社員11は…きっと視線を上げた。

「総統閣下、皆さん、僕、やります!」

 おおおーっ!と大歓声が上がる。総統は満足げに頷くと社員11の肩を元気付けるかのように叩いた。

「よく決心した。ナンバー11」
「はい、総統閣下。僕、優しいだけの男を卒業します!」
「よし、残りのスッパイマンは私からの餞だっ!」
「ありがとうございます、総統閣下〜っ!」
「頑張るんだぞ、ナンバー11っ!」

 泣きじゃくる社員11を優しく抱き留める総統。
辺りからは激励と、感動的な情景に対する拍手が沸き起こるのだった。

 

「さて、そろそろ本日の定例会も終盤です、総統閣下」

 ローブの袖から腕時計をチラリと確認し、副総統は総統へと軽く目配せをした。

「うむ。わかっている、副総統」

 重々しいため息を吐くと、総統は社員一人一人を見回していく。

「ここで、皆に辛い報告をしなければならない」

 沈痛なその声に、一同は不安げな表情を浮かべた。

「我々の中に…裏切り者が居るっ!
本気と書いてマジと読む、マジチョコをもらった者が一人だけ居るのだっ!」

 

『なんだって〜っ!』

 



後半へ続く(笑)



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