まさに小春日和ですね。
いい日に休日が当たったものです。
窓ガラスから差し込む、ポカポカとした優しい日差し。
空は晴れ渡っていて、通りを行く人に笑顔が見られます。
さて、午後から何しましょうか。
また図書館に戻って読書をしますか。あの本の続きが気になりますし。
せっかくのいいお天気なんですから、公園をお散歩して……。
「毎度毎度よく食べるわね。はいよ、トン豚白スープ煮」
「ふわぁーいっ」
「食べながら口を開けないの!」
うんうん、そうですねそうですね。おいしそうですね。
「聞いてないわね、あんた……」
聞いてますよ、しっかりと。
ただ、鍋の中身の方が重要なんですよ。
とろりとした濃厚なとんこつスープに、たっぷりのお野菜、
そして、適度な脂がのっているカルフール地方名産のカルブタ。
小皿に移す手間さえ掛けるのが惜しくて、はふはふしてそのまま口に入れますと、
あら、お肉が溶けてしまいました。
これぞ魔法。し・あ・わ・せ。
「ふむーーーっ!」
「はいはいはい」
アンナさんは呆れた眼差しを私に向けましたが、私は一向に気になりません。
なぜならば、先程も言ったとおり、私にとって重要なのはこの目の前のお鍋さんなんですから!
アンナさんは空いた、トマトスパゲティが乗っていた皿、
塩レモン風味のジューシーチキンが乗っていた皿、
コンソメで味付けされた焼海鮮ライスの乗っていた皿、
魚フライとゆで卵のサンドイッチが乗っていた皿などをトレイに載せ、奥へ行ってしまいました。
今度来るときは特大ジャンボパフェを持ってきてくださるでしょう。
ジャンボパフェ歓迎の準備でもしましょうか……。
最後の仕上げに直接お鍋に口つけてスープをずずずと飲み干し、完食です。
「ふぅー、もー一杯っ!」
「飲み物じゃないんだから………。そのぐらいにしなさい、食べ過ぎよ」
アンナさんの持つトレイの上には……ついにパフェ様がご降臨されましたぁぁぁ!
「よくそんな細い体で食べるわね」
「体質ですv」
「………首絞めるわよ」
「パフェ食べてからにしてください」
じ・つ・は、この季節パフェはうまいもん屋の裏メニューなんです。
高さ30センチ、直径10センチのグラスに、ミルクアイスクリームにイチゴのシャーベット、
その周りには赤く煌くイチゴ達。
その下にもアイスクリームがつまっていて、
下のクッキーがアイスクリームとイチゴソースにしっとりと浸されて………。
「アンナさん」
お客さんの入りが落ち着き(というよりも私の注文の品を運び終わったためかも)、
私は向いの席に座ったアンナさんに声を掛けました。
「私、アンナさんの愛を感じてます」
このパフェを作るのはアンナさんなんですよね。
たっぷりのクリームに、たくさん乗ったイチゴに私はパフェとアンナさんに微笑み掛けました。
「男の4人、振られたって気にしない気にしない。
私はちゃんとアンナさんのいいところを分ってますから」
「そうそう男4人に1ヶ月内に、『怖いから』、って振られても気にしな……って、
その情報源は誰よぉ?!」
「乾物屋のおばちゃんとか古道具屋のおじさんとかいろいろですよ。
みなさん、『いい子なのにねぇ』って口をそろえて言っています。うんうん、ありがたいことです」
「余計なお世話よ!」
アンナさんは恋多き乙女。
うまいもん屋の看板娘やっているだけあって、なかなかの器量よしなんですが、
なんせ、性格がきついものですから、大抵の男は引いてしまうんですよね。
付き合っていても大人しめの女の子らしい子に取られたりと……。
「てか、誰にそんな余計な解説をしてんのよ!」
「あははー」
パフェを取られそうになって死守。
とりあえず、笑っときましょうか。
「あたしにやけ食いさせなさいよ、それ」
それというのはもちろんパフェのことでして……。
「嫌です。自分で作ればいいじゃないですか」
「客から注文を受けていないのに作るわけには行かないでしょ」
「とにかく嫌です。その手離してください」
「作ったのはあたしよ」
「注文したのは私です!」
パフェ攻防戦を広げている最中に、ベルが鳴り、店のドアが開きました。
|