メイド☆ラプソディ No.2






アンナさんが顔を上げた隙にパフェを奪回。
パフェを取られないように喉に流し込みます。
ああ……もっと味わいたかった………よよよ。

「あ、シアさん」
私のピンチを救ってくれたのは、同じメイド仲間のシアさんでした。
マイペースな私、突っ込みのアンナさん、癒し系のシアさんと仲良し三人組です。

あ、そうそう。
私の自己紹介をしていなかったですね。
私は、ダリア・ローレン。
貴族様のお屋敷でメイドとして働いています。
ちなみに、私とシアさんが働いているお屋敷は別ですよ。

「シア? どうしたの? 入ってよ」
アンナさんがシアさんを促すのですが、シアさんは頭を横に振りました。
そんなシアさんの足元には大きな茶色のバックが。
お休みを取ってどこか旅行に行くんですか?なんて表情ではないですね。
元々色白の美少女でしたが、今は色白を通り越して青白い顔色をしています。
頬はげっそりとこけ、目元は少し腫れています。
「………お暇することになって………アンナさん、ダリアちゃん、お世話になりました………」
シアさんは静かに頭を下げました。
そう言うなり、荷物を肩に掛けくるりと背を向けました。
「ちょ、ちょっと待ってよ!」
アンナさんがシアを引き止めるのですが、珍しくシアさんはアンナさんの制止を無視して
出て行こうとしています。
「………そんな顔で帰ったら村のご両親心配すると思いますよ」
私の言葉にシアさんは足を止め、しゃがみこんでしまいました。
「シア……とりあえずここにおいで」
アンナさんはシアさんを立たせ、私の向かい席へ座らせました。
それから店内にいる他のお客さんに言いました。
「悪いんだけどさ、さっさと食べて帰ってくれない? また今度来る時1品サービスするからさ」
うまいもん屋の看板娘のお願いです。
皆さん心よく席立ってくれました。
「ちなみに今のこと他の人に言いふらしたらどうなるか分っているでしょうね……ふふふふ」
ア………アンナさん怖いです。
……まぁ、私も心もとないながらもその制裁に協力させて頂きますが。

他のお客さんが出て行って、店内は私達3人だけになりました。    
ちなみに、コックであるアンナさんのお父さんは厨房に引っ込んでいます。
寡黙で口が堅い人なので、面白おかしく話を広げることはないでしょう。

アンナさんがシアさんの肩をポンと叩きました。
「もう泣いちゃっていいよ」
「………ふ……うーーー! ああああーーーー!」
いつもおっとりと微笑み、小鳥の囀りのような声で話すシアさんが泣き叫んでいます。
………シアさんに何があったのでしょう。

泣いて泣いて泣き疲れたのか、シアさんがようやく顔を上げました。
アンナさんがミルクティーの注がれたカップを3人分、そっとテーブルに置きました。
「おいしい………」
シアさんはミルクティーを口に含み、微かですが、やっと笑顔を見せてくれました。
それに習い、私もミルクティに口をつけました。
確かに笑顔になるおいしさですね。
まぁ、この雰囲気ではヘラヘラと笑うわけにはいきませんが。

「………シアさん、何があったのか分りませんが、私達、力になれませんか? 
 私、シアさんにいっぱい助けられました。
 一番初めに会った時、細工師のお店が分らなくて案内してもらいました。
 あのままお店を見つけられなかったら……」
つい、体を震わせる私。
まぁ、それは置いておいて。
「私はどこの誰とも分らない身分で、身分不相応なお屋敷で働かせていただいて、そのためか、
 他のメイドさん達からは無視されていました。
 けど、シアさんは私に声掛けてくれて、いろんな決まりごとを教えてくれましたよね。
 その他にも、焼き菓子がおいしいお店、チキンがおいしい屋台、他国籍料理が食べれるお店……
 この辺りのことを案内してくれて」
「全部食べ物屋じゃん……」
「特にアンデルセンのクリームたっぶりの焼き菓子はおいしくて……
 そうそう、最近は栗のお菓子も出たみたいですね。
 個数限定なのでまだ口にしていないのですが………あいたっ!」
「話が脱線してるわよ!」
トレイで叩くなんて酷いです〜。
そんなやり取りをしていますと、シアさんからクスクスという可憐な笑い声が零れました。
つい、私とアンナさんも顔を見合わせ、笑い声を上げました。
「でも、あたしもダリアと同じ気持ちよ。だって、あたし達、親友じゃない!」
シアさんは目元を拭い、視線を一度下へ落とした後、口を開きました。
「ありがとう………………話だけ、聞いてもらおうかしら。

 本当は苦しくて悲しくてこの気持ちをどうおさめていいか分らなくて……誰かに聞いて欲しかったの………」 

 



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