DARK HALF1






その時、セリアは機嫌が悪かった。
と、まぁ他人事のように言ってみたけど、セリアとはあたしの事だ。
煌く艶やかな金髪と、輝くサファイアの様な瞳の持ち主の16歳
(自分で煌めくだとか言うなって?自信あるもんねー!)

あたしは、今怒っていた。

「あんのオヤジ! このあたしに偽地図を売るなんてー!!」
そう、あたしの機嫌が悪い理由は、少し前に旅で立ち寄った街で買った地図が……なんと
偽物だったからだ。

「地図が正しかったら、もう次の街に着いているはずだもんね」
隣で笑っているのは旅の仲間であるレキ。
癖がついて跳ねている銀髪とガーネットの様な深紅色の瞳をした17歳の男だ。
ちなみに見えるのは右目のみで、左目は眼帯で隠れて見えない。
「なんでそんなにのほほーんってしてるの!? あたし達は道に迷っているの! 分かる!!?」
「分かってるって。
でも、俺達特に目的地があるってワケじゃないから、たまにはいいんじゃない?」

何故こいつはいつもこんなに呑気なのだろうか?
「それに今、ルカが近くに街か何かないか探しに行っているから、
はぐれない様にって待っているんだろ? 焦ってもしかたないさ」

「……むー………」
正論だから言い返せない。
「そりゃそうだけど……。あーっっっ! 
あの地図売りのオヤジ、次会ったら覚えてなさいよぉぉぉ!!!」

あたしが危ない事を考えているのが分かったのか、頭の上から幼い声がした。

「せりあ、ドーシタノ?」
「ああ、何でもないよ、ラミ」
あたしは声の主を頭の上から下ろして、膝に乗せた。
「らみハ、笑ッテルせりあガ好キ。怒ッタラダメ!」
その言葉に顔が思わず綻んだ。
「大丈夫、もう怒ってないから」

あたしに頭を撫ぜられて笑っているのは、
軽く両手に乗せる大きさで人型をしている生き物だった。

『マンドラゴラ』

多分、一度はその名を耳にした事がある人も多いと思う。
土に生えてる花を抜いたら、その根が叫び声をあげる。
それを聞いた人はそのまま命を落とす、という『致死の声』を持つ
れきっとした植物の魔物である。

ラミはそのマンドラゴラなのだが……まぁ、幸いな事に、このラミは幼く、
力も弱かったからか、悲鳴を聞いたあたし達が死ぬ事はなかった。

すっごい頭痛は味あわされたけどね。
何故かあたし達に懐いてしまったので、一緒にいる。
普段はあたしの頭の上で日光浴をしている。
頭に咲いた花がチャームポイントだ。

「あはは、セリアもラミには敵わないみたいだな」
「ラミ、かわいーもんね」

あたし達がラミのお陰で、なにやらほのぼとした雰囲気に包まれている時、
それをブチ壊す様な声が響いてきた。

「いやぁぁぁぁぁっ!!!」

あたしもレキも動きを止め、声の聞こえた方を見る。・
「……普通、悲鳴って『絹を引き裂く様な声』って言うわよね?」
あたしが言うとレキも頷く。
「今のはなんて言うか……絹って感じじゃなかったよな? むしろぞうき……」
レキはそこまで言って我に返った。
「行くぞ!」
走り出したレキを見て、あたしはラミに話し掛けた。

「ラミ、良い子だからお留守番できるよね?」
「ウン!」
「ここで待ってて、ルカが戻って来たら、すぐ戻るからって言ってたって伝えてね?」
「ワカッタ。 二人ハ、とらぶるニ首ヲ突ッツコンデッタッテるかニ言ットク!」
「……いつそんな言葉覚えたの………?」
ちょっと脱力したあたしだったけど、気を取り直して声を聞こえた方へ走り出した。

「行ってくるね!」



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サトル:マンドラゴラのペットって(汗)



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