DARK HALF2







しばらく走るとレキが立っていた。

辺りを見ると、森の一画の少し開けた場所に人が倒れていて、
その真ん中に1人、座り込んでいる人がいた。

倒れているのは1人や2人じゃない。
数えてみたら14人もいる。

「……どうしてなの……? こないでって言ったのに………」
座り込んだ人物は俯いたままで呟いている。・
まさか、この人がこんな短時間でみんな倒したの!?

「なぁ、さっきの悲鳴ってあんた?」
レキが声を掛けた途端に、その人はびくっと体を震わせて顔を上げた。
「……アタシ達は何も悪い事なんてして無いのに……何故殺されなきゃいけないの!?」
涙を浮かべた瞳で睨むと、その人はあたし達に向かって走ってきた。
「セリア、退いてろ!」
レキがあたしを押し退ける。
「やぁぁ!」
その人はレキに短刀で斬りかかろうとした格好のまま、突然勢いよくすっ転んだ。

考えてみよう。
勢いよく走ってる時、すれ違う寸前に横から誰かが足を出す。
そりゃ大体の人は引っ掛かって転ぶわね。
今、レキは体をずらして刃を避け、そのまま相手の勢いを利用して
足を引っ掛けて転ばせたようだった。

ちなみに転んだ時に手から飛んだらしい短刀は、あたしの足元で地面に刺さって揺れている。

危ないとこだった……。

「えっと、あの……大丈夫?」
あまりの転びっぷりに、あたしは控えめに声を掛けてみた。
「……大丈夫なワケないじゃない! 痛いわ!!」
がばっと身を起こし、その人はあたし達を見た。
改めて見ると、その人はほっそりとして赤い髪が似合う20歳くらいの綺麗な人だった。

「あなた、魔族?」
あたし達を睨むその金色の瞳を見て尋ねてみる。
「今更何を言ってるの!? だからアタシを殺すんでしょ!」
どうやらここに倒れている人達の仲間と思われているらしい。
「違う違う。俺達はただの通りすがり」
「ウソよ! こんな何も無いところ、通りすがる人がいるワケないじゃない!」
「本当のとこは迷子だ!」
「……は?」
レキの言葉に唖然としたその人は、急に真顔に戻る。
「後ろ!!」
振り向きもしないで、レキは一言だけ発する。

「《地の壁 ― アース・ウォール −》!」

その言葉に反応してレキの背後の地面が壁になり、
飛んできた矢から身を守る盾になる。

「……あなた、魔術師?」


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サトル:そうです、私が魔術師です!(なわけないだろ…)



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