しばらく走るとレキが立っていた。
辺りを見ると、森の一画の少し開けた場所に人が倒れていて、
その真ん中に1人、座り込んでいる人がいた。
倒れているのは1人や2人じゃない。
数えてみたら14人もいる。
「……どうしてなの……? こないでって言ったのに………」
座り込んだ人物は俯いたままで呟いている。・
まさか、この人がこんな短時間でみんな倒したの!?
「なぁ、さっきの悲鳴ってあんた?」
レキが声を掛けた途端に、その人はびくっと体を震わせて顔を上げた。
「……アタシ達は何も悪い事なんてして無いのに……何故殺されなきゃいけないの!?」
涙を浮かべた瞳で睨むと、その人はあたし達に向かって走ってきた。
「セリア、退いてろ!」
レキがあたしを押し退ける。
「やぁぁ!」
その人はレキに短刀で斬りかかろうとした格好のまま、突然勢いよくすっ転んだ。
考えてみよう。
勢いよく走ってる時、すれ違う寸前に横から誰かが足を出す。
そりゃ大体の人は引っ掛かって転ぶわね。
今、レキは体をずらして刃を避け、そのまま相手の勢いを利用して
足を引っ掛けて転ばせたようだった。
ちなみに転んだ時に手から飛んだらしい短刀は、あたしの足元で地面に刺さって揺れている。
危ないとこだった……。
「えっと、あの……大丈夫?」
あまりの転びっぷりに、あたしは控えめに声を掛けてみた。
「……大丈夫なワケないじゃない! 痛いわ!!」
がばっと身を起こし、その人はあたし達を見た。
改めて見ると、その人はほっそりとして赤い髪が似合う20歳くらいの綺麗な人だった。
「あなた、魔族?」
あたし達を睨むその金色の瞳を見て尋ねてみる。
「今更何を言ってるの!? だからアタシを殺すんでしょ!」
どうやらここに倒れている人達の仲間と思われているらしい。
「違う違う。俺達はただの通りすがり」
「ウソよ! こんな何も無いところ、通りすがる人がいるワケないじゃない!」
「本当のとこは迷子だ!」
「……は?」
レキの言葉に唖然としたその人は、急に真顔に戻る。
「後ろ!!」
振り向きもしないで、レキは一言だけ発する。
「《地の壁 ― アース・ウォール −》!」
その言葉に反応してレキの背後の地面が壁になり、
飛んできた矢から身を守る盾になる。
「……あなた、魔術師?」
|