DARK HALF3−3





「…るか、らみ嫌イ?」

ルカの発言にショックを受けてラミが瞳を潤ませている。

……もしこのまま泣きだしたりしたらマンドラゴラの致死の声でこの食堂の中、
とんでもない事に!?
効果は弱いから死にはしないだろうけどまたあの頭痛を味わうのはイヤー! 

「ま、まさかラミの事嫌いなワケないデスヨ?ねールカ!」
「………本当ニ?」

怪しげな口調で喋るあたしからルカに視線を向けるラミの頭に軽く指が乗せられる。

「何故僕がラミを嫌ってると思うんだ?」
「………ダッテ、サッキ頭ニ花ガ咲イテイルヤツハ嫌イダッテ言ッタ」

ルカは軽く溜め息を一つ吐いてティグを指差した。

「それは違う。僕は『頭の中に花を咲かせているヤツが嫌いだ』って言ったんだ。
 頭の中に花を咲かせているヤツと言うのはこいつらみたいな馬鹿の事を言うんだ。
 ラミは頭に花が咲いているだけで賢いいい子だ。何故嫌わなくてはいけない?」
 「…るかぁ!」

ラミは嬉しかったのか満面の笑みを浮かべた。
それに釣られてかルカの口元も緩んだ。

「……ルカが笑った!」
「………………それがどうした」

思わず漏れたあたしの言葉にルカがジロッとこっちを見た。

「初めてルカの笑顔を見たんだもん。嬉しー!」
「………勝手に言ってろ」
「勝手に言ってる!」

そう言われてちょっと赤くなってそっぽを向く辺りが可愛いんだよねぇ。

「これは何なんだ!?」

ルカに馬鹿とはっきりきっぱり言われたティグはその事よりも気になるのか、
ラミを指差してあたしを見た。

「これ呼ばわりとは失礼じゃない?この子はあたし達の旅の一員なんだから」
「…そうなのか?で、そいつは何だ?魔物、だよな?」
「…魔物?」

突っ伏せたままだったユードがティグの問いに反応して顔を上げてあたしの方を見た。

「あ、その前に。さっきあたし達名乗りそこねちゃったよね?あたしはセリアよ」
「俺はレキ、よろしく」
「で、こっちがルカ。目付きが悪い様に見えるかもしれないけど目がよくないだけで、
 悪気があって睨んでるわけじゃ…多分…ないから気にしないでね」 

気を利かせたあたしの紹介が気に食わなかったのか、ルカがじろっとあたしを見た。

「それでこの子はラミ。後は…こっちおいで」

ミルクを飲み終わってからルカの足元でおとなしく丸くなっていたソロンは
あたしの呼び掛けで膝の上に飛び乗った。 

「この子はソロンよ」 

ラミとソロンを交互にじろじろ見て、
ティグとユードは説明を求める様な視線をあたしに向けた。 

「まあ、確かにこの子達は魔物よ。ラミはマンドラゴラ、ソロンはリュンクス。
  それがどうかした?」
「…どうかした?って…そこの二匹は魔物なんだろ!?何故殺さない!」
「魔物は人に仇なす存在なのですよ!それと旅をするなど、私は貴方の正気を疑います」

二人はさっきまでの様子が嘘と思える程に険しい顔つきを見せる。
ちょっとその言い種にむっときたあたしは反射的に口を開いていた。 

「魔物が危険だなんて言われなくても知ってるわよ。
 でもだからって全部一緒くたにしなくてもいいじゃない?
 この子達はいい子だもん!」

言い返したあたしを鋭い視線で睨み付けて、ティグは頭を振った。

「馬鹿馬鹿しい!魔物を全部一緒くたにするなって?
 じゃあお前は魔族に対しても同じ事を言えるか!?言えるわけないだろ!?」
「もちろん言えるに決まってるでしょ!
 魔族だ人間だなんて関係なくいい人もいれば悪い人もいるわ!
 そんな当たり前な事もわかんないの!?カビ頭!」 

あたしのセリフにティグは顔を強張らせて一瞬硬直する。

「セリア、カビ頭って?」

空気が読めてないのか、わかっててやってるのか
レキはあまりにも普通にあたしに問い掛けてきた。

「頭の中身が古くさすぎてカビまみれって意味よ!」
「頭の中に花咲いた馬鹿だとか古くさすぎてカビまみれとか二人ともひどいなぁ」
「…お前達、俺をコケにしてどうなるか…」

くすくす笑うレキにまで馬鹿にされたと感じたらしく、
ティグはすっと腰の剣の柄に手を伸ばした。 

「ティグ、止めなさい!」

鋭い制止の声にティグの動きがびくっと止まる。

「ユード?何故止める!」
「貴方はこんなところで剣を抜く気なんですか?少しは頭を冷やしなさい」

ティグはそこで自分がいるのが食堂の中だと思い出した様で構えを解いた。
程々にいた客は騒ぎに巻き込まれない様に大半が逃げ出し、
少し残った客も遠巻きに様子をうかがっているらしかった。

「店主、騒ぎを起こしすまない。代金はここに置いておく。釣りはいらん」

ティグは机にコインを何枚か置くと、あたし達に背中を向けた。

「さっきの提案は取り消しだ。お前達の様な奴らと短期でも道を共になどできん!」

立ち去るティグに取り残されたユードはあたしをじっと見て口を開いた。

「私もティグの意見に賛成です。魔族も魔物も危険だ。
 それに元々それらは女神に創造された存在ではない。
 このリーディアルにとって間違いなく異物なのですよ?」
「それが?元々がどうであれ今は同じ空の下で暮らしてるんじゃない。
 つまりは女神にここにいるのを認められたって事よ。異物なんかじゃないわ!」

ユードは軽く頭を振る。

「私達は根本的に考え方が違うみたいですね。
 これ以上話しても無駄な様なので失礼します」 

ティグの後を追って足早に去るユードの背中を見つめながら、
あたしはポツリと呟いた。

 

「二人揃ってカビ頭め!」

 

 






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