DARK HALF3−2





「いきなり何を言いだすんですか、貴方は。相手の都合も考えないといけませんよ。
 しかもまだ名前すら名乗ってはいないではないですか!まったく非常識な人ですね、本当に」

片方の提案をもう一方が止めている。
その意見にあたしも賛成します。

しかし改めて二人を見るとなんだか不思議な人達だ。

橙色の髪と焦茶色の瞳をしたくだけた口調の方は、剣を腰に下げてるから剣士なんだろうけど、
薄紫色の髪と紺色の瞳をした丁寧な口調の方は白を基調とした服を着ていて
格好といい雰囲気といい聖職者って感じだ。

妙な組み合わせだなぁ。

それに剣士風の方はさて置いて、聖職者風の方は本当に旅人なのかな?
どー見てもその格好は旅よりも礼拝所で女神に祈ってる方が似合ってるって思うのは
あたしだけじゃないはず。

「連れが突然妙な事を言い出してしまって申し訳ありません。申し遅れました。
 僕はユードと申します。こっちはティグ。見ての通り旅の者です」
「…はあ、ご丁寧にどーも。だけど全然そうは見えないんですけど」

あたしの言葉に二人は顔を見合わせる。

「…旅人に見えませんか?」
「はっきり言って」
「…ちなみにどちらが?」
「こっち!」

ビシッとあたしに指差されてユードと名乗った聖職者風の方はちょっと困った様な顔をした。

「…見えないんですか」
「だからもっと動きやすい服着けろって俺はちゃんと言ったじゃねーか!」
「僕は女神に仕える身なんですよ!だからこの格好にこだわりがあるのです!
 貴方みたいにどんな格好でも頓着しない人間と一緒にしないでください!
 …大体何故僕は貴方と旅に出てこんなところにいるんでしょうか?」

ユードは深く溜め息を吐いた。

「約束破るなんて最低な事俺はしたくないからな!」
「…忘れててほしかったですよ、本当」

ユードは聖職者で何か約束があったから
ティグって剣士といやいやながら旅をする羽目になったって事?
どうしてそうなったのかその約束ってちょっと気になるけど初対面だし
そこまで聞きにくいかも。

「約束ってなんだ?」

あたしの内心も知らずレキが直球で問う。

「ああ、彼と僕は幼なじみなんですが、何を血迷ったのか幼い頃に
『大人になったら絶対旅に出るんだ!』
『その時には自分が護衛になってやるから一緒に行こう!』
 といった約束を交わしてしまいまして…。消してしまいたい過去ですよ…」

あ、なんか落ち込んじゃった。

「僕はその後神官になり旅に出ようなんて思っていた事をすっかり忘れていたのですが…」
「実は薄情だよなー、お前ってヤツは。俺はちゃーんと覚えていたぜー」

ティグはユードの肩をぽふぽふと叩き、ジロッと睨まれている。

「大体本当に非常識なんですよ、貴方は!
 いきなり神殿にきて僕を呼び出して何かと思ったら『さあ俺の方の準備は出来た。
 約束通り旅に出るぞ!大丈夫。お前の分の荷物も準備したし、
 神殿の方にも一身上の都合により自分を見つめ直したいのでしばらく旅に出ますって
 お前の名前で届け出を出して許可貰ってあるから安心しろ!』なんて事言い出した挙げ句、
 本当にその日の内に旅に出てしまうんですから!」

うっわぁ、そりゃ用意周到な事で。
やられた方はたまったもんじゃないけど。

何だか話している内に興奮してきたみたい。
相当色々積もり積もっていてたんだろうなぁ。
神官とは思えない殺意さえ感じられる怒りの視線をティグに向けてる。
慣れてるのか図太いのかティグはユードの視線を全く気に掛けてないみたいだけど。

「でも何でそこまでされて一緒に旅をしてるんだ?」

レキはそんな二人の間の空気を全然気にしないでまたもや直球で聞いてるし。

「ああ、それはな」

ティグがにやりと笑う。

「こう言えばいいんだよ。『お前は神官のくせに交わした約束を違えるのか!?』」

ユードがビクッと動きを止めた。

「………約束は守ります。だからこそ貴方の気が済むまでは旅に付き合うと言いました。
 …ですが、あれからもう一年になるんですよ!?僕は早く神殿に帰りたいんですーっ!!」

そう叫んでユードはぱたっと机に突っ伏せた。

「まあ、あれは気にしなくていいから」

やっぱり慣れてるのかティグはユードの行動を気にも掛けてないみたいだ。

なんか哀れな…。

「それで返事は?」
「何の?」
「一緒にピュノトまで行かないかって誘いの事」

そう言えばそんな事言ってたっけ。
すっかり忘れてた。

「えっと、どうする?」

あたしはレキの方に視線をやった。

「俺は別に構わないけど」

いや、少しは構った方がいいんじゃないかなぁ?って思ったりもするんだけど。
相手は神官なんだからレキがダークハーフだって知ったらどんな反応するかもわかんないのに。 

「………僕は絶対イヤだ」

呟く様な声に視線をやると、黙って話を聞いていたルカが冷めた視線をティグ達に向けていた。

「つれない事言うなよー。二人はいいって言ってるじゃないか」

あたしはまだ一言もいいなんて言ってないんですけど?

「…はっきり言う。僕はお前みたいに頭の中に花を咲かせているヤツが嫌いなんだ!」







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