世紀末 〜Other２〜

いろんな番組がカウントを取り始めた。

わけ分からないノストラダムス研究かがうんちくをたれて、人々の興味関心を煽った。
多くの者が「信じてない」と言いながらも、緊張し、何かが変わるかもとわずかに期待し、そのときを迎えた。

　一九九九年、七の月はあっけなく終わった。

恐怖の大魔王などという物体は降らなかった。

その内の一人に、室住正孝がいる。
彼は高校を卒業し、一年浪人をした後、某三流大学に無事入学、二〇〇三年の今、大学生活を謳歌している。
大学生に勉強する暇はない。それを否定する気もなく、サークル、バイト、コンパの毎日。

気持ちのよい夜だった。

正孝は隣の友人の肩に腕を回し、鼻歌を歌う。
ほろ酔い気分の正孝を苦笑しつつ支えるのは、大ちゃんという。

「大ちゃん、流れ星だよぉ。願いごとしてるかぁ？」
「星、流れてないって」
「ワーイッ！　しし座流星群だぁ」

　この男の目には何が映っているのか……。

　急に正孝が、うへへと思い出し笑いをし始めた。

「そういえばさ、何とかの大魔王が降ってくるって予言あったよな」
「ノストラダムス？」
「そっ。お前も期待してたクチ？」
「期待？」
「でも結局っ、何もなかったよな」

「ごめんね…」

正孝はきょとんと大ちゃんに顔を向けた。

「正孝が末期主義思考の人間だと思わなかったよ。
大気圏から落ちる予定だったけど、実は僕高所恐怖症なんだよね。
まあ人間としてはやめてくれた方がありがたいものかと思ったんだけど･･･そうじゃなかったんだね」

大ちゃんはいったん言葉を切り、正孝を見た。
大ちゃんはにっこり笑う。硬質な印象を与える目。

体中の毛という毛が一気に逆立った……ような気がした。正孝は息を呑んだ。

「正孝のために僕がんばってみる」
「……大ちゃん？」

ミステリアスな微笑に、正孝は自分がとんでもないことをしでかしてしまったことに気がついた。

人類滅亡のカウントが再び動き始めた。

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