「え……私?」
少女はぽかんと間抜けな顔を二人の天使に晒した。
「そう、君が選ばれたんだよ」
「なぜ私が……?」
「女神がそうお決めになったんだ」
「なぜあなたがっていうことには私も同感よ」
「アイーシャ!」
アイーシャと呼ばれた天使はふん、と顔を背けた。
愛と美の女神、アフロディテ。
4、5年に一度、女神は自分の意志を託すのに相応しい少女を選び、
自分の力を授け、指名を与える。
この世界から、愛と美が消え去られないように。
この世界を侵略しようとする異界のものから、この世界を守るために。
「私にはできないっ!」
選ばれし少女は叫んだ。
「なぜそう思うの?」
中性的な雰囲気を持つ天使、フィーシャは少女に問いかける。
「だ……だって………。私のどこに美しさがあるというのよ………」
歴代の選ばれし少女達は美しかった。
自信に満ち溢れ、同じ人間だとは思えない程神々しかった。
クスと、フィーシャは笑い声を零した。
呆れるような、でも温かな。
「女の子はね、誰だって美を持っているんだよ。
一人一人、アフロディテ様から素敵なプレゼントを受け取ってるんだ。
ね、アイーシャ」
「気づかない、気づこうともしないものに言っても無駄だわ」
「それなら、気づかせてあげるのが僕たちの役目だ」
アイーシャは肩を竦めた。
任せる、という意味だ。
フィーシャは少女の手を取った。
アイーシャが溜息を付き、反対側の手を取る。
「「目覚めましょう」」
『誰だって美を持っているんだよ』
嘘つき。
そんなわけはない。
世の中不平等。
嘘つき
嘘つき
嘘つき
嘘つき
嘘つき
デブ。
ブタ。
ブス。
ブス。
キモイ。
うるさい。
うるさい。
ああああああ、もう嫌だ。
嫌だ。
嫌だ。
私の元へは天使は来ない。
コンナ人生モウイヤダ。。。
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