DARK HALF2−6







「眠ってるって、レキ今ちゃんと起きてるじゃない?」
首を傾げるあたしを見てレキは自分の胸に手を当てた。

「いや、確かに私は起きているが『レキ』はぐっすり眠っているよ。
 だからさっきから私だけがセリアと話していただろう?」
「あ、そーゆー事?」
「そういう事」

レキは一人だけど、レキの中にはもう一人いる。
たとえ一人の意識が眠っていたとしても、もう一人が起きているなら、体はそっちが動かせばいい。
きっとそういう事なんだろう。

「『レキ』はまだ幼いから難しい事は苦手みたいでね。今も話の途中で眠ってしまったよ。
 まあ普段も夜は大体眠っているけどね。この時だけなんだ。私が『私』でいられるのは
 正直に言うと、私は眠るのが勿体ないと思っているんだよ」
それでも体も休めた方がいいと思うよ?
 いざ!って時に疲れが蓄まっててふらふらですーってなったら大変でしょ?」

あたしの言葉にレキは苦笑している。
いくら人間離れした力を持っていてもレキだって人間なんだから疲れる事だってきっとあるハズだもん。
でも、あたしまだ一度も疲れたーってレキが言ったの聞いたことないような??

「今日のところはそのお言葉に従って休んでくるかな」
「そうそう、素直でよろしい!見張りはあたしがちゃんとやっておくからねー」
あたしは立ち上がって歩きだしたレキを見送る。
「よろしく。前みたいに居眠りしない様にね」
「わかってるわよ!」

扉の前でくるりと振り返り、レキは手を振って小屋に入っていった。
「セリア、ルカ、おやすみ」
「おやすみー……ぃ?」

あれ?
なんでそこでルカの名前が出てくるの?

やっぱり気付いていたのか」

「うひゃっ!?」
すぐ傍らから聞こえた声に思わず変な声が漏れた。
「る、ルカ?どこ?」

辺りを見回しても月明かりに照らされた森の木々がぼんやりと見えるくらいで人影はない。

僕はここだ」
「ここってどこよ?」

ふうっと息を吐く音が聞こえた後に、がさがさっと近くに生えてる一本の木が揺れ、
ルカがふわりと飛び降りてきた。

「ルカ眠ってたんじゃなかったの?何時の間にそんなとこに?」
あんなに大声でお喋りしておきながら、僕が気付かずに眠り続ける事ができたと
 本気で考えているのか?」

全くもって正論です。

……うう、ごめん」
「まあいい。僕にとっても面白い話だったしな」
どこから聞いてたのよ?」
「たしか『私は答えられるよ。どうかした?』『どうもしない!』『そう?』
 とか言うやり取りの時にはそこにいた」
ルカはそう言って降りてきた辺りを指差した。

結構最初からいたんだ。
忘れられた神話をレキが話し始める前から聞いてたみたいだし。

「黙って聞いてないで、一声かけてくれればいいのに」
「話を遮るのもなんだし、どうせあいつは気付いていたんだ。声を掛けなくてもかまわないだろう?」

あたしは全然気付かなかったもん!
レキは絶対に気付いてたろうに教えてくれなかったしー。

ん?
今更だけど、もしかしてあたし鈍い!?
そんな事ないよね?
気配を感じとるのちょっと苦手かも知れないけど鈍くはないよね!?
そうそう、あたしが鈍いんじゃなくて、レキが鋭すぎるのよね、きっと。
うん、そういう事にしておこうっと。

ルカはレキが話してた神話、今までに聞いた事あった?」
「いや、僕も初耳な話だったよ」
「そっか」

ルカはあたしをちらりと見る。

「レキを休ませるんじゃなかったのか?」
「えっ?そのつもりだけど
「さっき僕が言った事をもう忘れたのか?
 そんなに大声で喋っていられたらどんなに鈍いヤツでも起きてしまうぞ」

うっ
それはごもっとも。

「わかった。じゃあ小声で喋る」
…………勝手にすればいいさ」

ルカは降りてきた木の根元に座ってもたれかかり瞳を閉じた。

やっぱりこうしていると、年相応の普通の子に見えるんだよねー。
なんて考えながらじっと見ていたら視線に気が付いたのか、ルカがあたしを見た。

…………………何を見ている?」
「ルカ」
………それはわかる。僕は何故僕を見ているのか聞いているんだ」
「何か喋ろう。と言うか喋って?」
は?」

あたしの心温まる提案にルカは珍しくぽかんとしている。

「何故だ?」
「何故って、あたし達一緒に旅してるけど二人っきりになるのってあんまりないじゃない?
 聞きたい事も色々あるし。だから」

ルカはあたしの言葉に反応して、険しい表情を浮かべ睨みつけてきた。

何を喋って欲しいんだ?あの御方の事か!?それともその下僕達の事か!?
 確かに僕はあの御方に捨てられた。その僕を拾ってくれた事には少しは感謝しているが、
 それでもあの御方の事を話すなんて僕にはできない!!」
「しーっ!」
「っ!?」
もうちょっと声を抑えないとレキが休めないよ。さっきそうルカが言ったんでしょ?」

人差し指を立てて口にあてるあたしを見て、ルカははっとした様に口をつぐみ俯いた。

「それにね。あたし別にそんな事話せなんて言わないから。
 …
ま、確かに気にならないって言ったら嘘なんだけど、その内ルカが話したくなったらでいいよ」
…………
「それと言わせてもらうけど、あたしはルカを拾ったつもりなんてこれっぽっちもないんだから!」

ルカはあたしの方を見ない様にか俯いたままだった。

「最初にあった頃は違う立場にいたかもしれないけど今は仲間になったんでしょ!
 あたし達は対等なんだから拾うも何もないじゃない」
………セリア」
「それにルークの事だってあったでしょ?」
………っ!」

あたしの口から出てきた名前に、びくっと身を震わせてルカはゆっくりと顔を上げた。

「ルカがいなかったらルークは今頃とっくに死んでた筈だから感謝するのはむしろあたしの方だよ」
は?」

ルカは信じられないモノでも見るかの様な視線をあたしに向ける。

………それを本気で言っているのか?
 僕は僕があいつをルークを殺そうとした張本人なんだぞ!?」





 




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