DARK HALF3







魔術は魔族とその血を受け継いだ者にしか使えない術だ。
その血に流れる魔力をい使い、『呪文― ワード ―』そして『鍵 ― キィ ―』で
イメージを現実化させる事ができる。

普通の人間では持ち得ない力を持つ故、恐れられ、忌み嫌われる事も多い。
あたしの住んでいた国、ファールムゥグでは王家に仕える宮廷魔導師は珍しくなかった。
でも、今あたし達がいる『ウェルハーン』は、自らを神聖国と名乗って、
魔族とその血筋を迫害しているらしい。

あたしは血にこだわるなんて馬鹿馬鹿しいと思う。
血なんて関係なく、良い人はいるし、悪いヤツもいる。
だから、あたしはレキ達と旅をしている。

「たしかにレキは魔術師よ。それにあたし達は魔族だからってだけで
あなたに危害を加えたりなんかしないわよ」

その人はあたしの目をじっと見つめて信じてくれたのか表情を緩めた。

「じゃ、俺はうっとうしいからアレ、どうにかしてくる」
レキはさっきから当たりもしない矢を放ち続けている男を一瞥すると一言発した。

「《呪縛》―― バインド ――!」

木の陰から見える男は、弓を構えたままの姿勢で動きを止める。
「な、なんだっ!?」
魔術のせいで突然動かなくなった自分の体に焦る男を尻目に、
レキは悠々と自己紹介を始めた。

「俺はレキ。こっちはセリア。あんたは?」
「あ、あたしはジュリー……さっきは誤解してゴメンなさい……それと助けてくれて有難う」
 そう言ってジュリーは上目遣いにレキを見て、恐る恐るといった感じで問い掛ける。
「あなた、さっきの魔術……『鍵(キィ)』だけで発動させたわよね? 
 どうやったらそんな事できるの?」

あたしも同じ様な質問をした事がある。
少しでも魔術について知っている人は『呪文(ワード)』なし、『鍵(キィ)』のみで
魔術が発動するなんてありえない、と声を揃えて言うだろう。

それくらいレキのした事は変なのだ!
いや……レキ自身、大分変なヤツなのだが。

「んー、どうやってって?……できるからだ! できる理由は俺も知らない!」
「そんなのじゃ納得しないって」
あたしが呆れる様に言うとレキは言い返してくる。
「セリアはそれで納得しただろ?」
「まぁねぇ。でもあの時はありえないモノを見ちゃって混乱してたからでしょ?」
レキとの出会いを思い出して、あたしは軽く笑った。

「まぁ、それより、俺もさっきから聞きたい事があるんだが……」
「あ、あたしも聞きたかったんだけど……」
あたし達は同時にジュリーに問い掛けた。
「あんた男だよな?」
「あんた男よね?」
ジュリーは口調こそ女性的ではあるが、その声は低いし、顔も綺麗な方ではあるが、
男性的な顔立ちである。

胸も無い。
まぁ、ハスキーボイスで男顔の女性って可能性ってのもあるかもしれないケド……。
「……たしかにアタシは男よ……でも、心は女だから!」
あたしはこのセリフを聞いてまずっと思った。
勿体ない、と。
黙ってさえいれば格好いいのに……。
「まぁ、趣味は人それぞれ。だからな」
レキも初めて遭遇するタイプだったのか、少し虚ろに笑う。

「あー、ジェリーいたー!」
「ジェリー大丈夫? ケガしてない?」
「ジェリー。ぼく恐かったよぅ。もう置いていかないでよぅ」
茂みから3つの幼い声と共に小さな人影が飛び出してジェリーにしがみつく。
「アタシが迎えに行くまでおとなしく隠れてなさいって言ったじゃない!」
「ごめんなさい……」
「だって心配だったんだもん……」
幼い子ども達はジェリーにしがみついたままあたし達を睨む。
「こいつら悪いヤツ?」
「大丈夫、その人達はアタシを助けてくれたの。良い人よ」
ジェリーの言葉にお子ども達は力を抜いた。
「この子達は?」
哀しげな顔でジュリーは子ども達の頭を撫ぜた。

「知ってるわよね? 
『ダークハーフ』の伝承を」


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