あたし達は頷いた。
ダークハーフ。
それは闇の半身。
封印されし魔王を、千年の刻が過ぎ去りし後に封印より解き放つと言われている存在。
金色の瞳は魔族の証。
しかし、片目が金色なのはダークハーフの証。
それは3歳の子どもでも一度は聞いた事があろう伝承。
そして、今がその千年目だという事も、大抵の人が知っている。
「今、この国は、ウェルハーンはダークハーフが現れる前に、
魔族の血を根絶やしにしようとしてるの。……この子達の親は魔術師だったから殺されたわ」
「でも、オレ達ジュリーがいるから淋しくないぞ!」
「あたしも」
「ぼくも」
そう言いながらも、子ども達の目には涙の粒が浮かんでいる。
「バカねぇ……無理しないのっ」
ジュリーの一言に子ども達は泣き出した。
そんな子ども達をジュリーは優しく抱きしめ、撫ぜる。
「放っておいたらこの子達も危ないかと思って、アタシが連れて逃げたの……」
あたしは憤りを感じていた。
人を人と思わないこの国のやり方に、腹が立ってしかたなかった。
多分レキもだろう。
レキにとっては色んな意味で他人事じゃない話だったから。
「でも、もう逃げられないかもしれないわ……
天馬騎士団(ペガサスナイツ)が出てきてしまったんですもの」
その言葉にあたし達は驚いた。
「……天馬騎士団って、ウェルハーン王家直属の!?」
「国まるごとで魔族狩りか……この国は、こんなに永い刻が過ぎても相変わらずだな……」
レキが溜息をつく。
「レキ、どうする気? あたしはほっとくことなんてムリ!」
「勿論、ほっとくつもりなんてないさ」
レキが頷いて辺りを見渡す。
「こいつらは騎士じゃないな。雇われ傭兵ってとこか?」
ゆっくりと一言一言話すレキを訝しげに見た男の表情が凍りつく。
「ま、まさか……!」
レキは、男に指一本触れてはいない。
指を少し動かして、自らの顔の前に持ってきただけだった。
「お、お前が……そうなのか!?」
男は真っ青な顔で呻いた。
「素直に教えてくれたら、命は取らないでやるよ?」
「あ、あいつらはここから北に進んだところにある湖の畔の砦に居る!!」
「本当?」
震えながら男は一気に喋る。
「嘘じゃねぇ! さぁ、約束だろ? 早く動けるようにしてくれ!!」
レキは男の言葉に薄く笑う。
「命は取らない……とは言ったけど、他に何か約束したかな?」
男は叫ぶ。
「このままじゃ死ねって言ってるのと変わらないじゃねぇか!」
「そう言ってるんだよ。そこで死んでいる仲間共々、森の獣の餌になればいい!」
男に言い捨てるとレキは、北に向かって歩き出した。
「あ、レキ、待って! あたしも行く!」
訳が分からないで呆然としているジュリーと子ども達に近づいて声を掛ける。
「あたし達、もう行くね」
あたしは鞄から、急いで紙切れを出して一筆書いて渡した。
「ここから東に進むとファールムゥグとの国境があるから、そこの兵士にこれを見せて」
そう言い残してあたしはレキを追って走り出した。
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