DARK HALF4







あたし達は頷いた。

ダークハーフ。
それは闇の半身。
封印されし魔王を、千年の刻が過ぎ去りし後に封印より解き放つと言われている存在。
金色の瞳は魔族の証。
しかし、片目が金色なのはダークハーフの証。
それは3歳の子どもでも一度は聞いた事があろう伝承。
そして、今がその千年目だという事も、大抵の人が知っている。

「今、この国は、ウェルハーンはダークハーフが現れる前に、
魔族の血を根絶やしにしようとしてるの。……この子達の親は魔術師だったから殺されたわ」

「でも、オレ達ジュリーがいるから淋しくないぞ!」
「あたしも」
「ぼくも」
そう言いながらも、子ども達の目には涙の粒が浮かんでいる。
「バカねぇ……無理しないのっ」
ジュリーの一言に子ども達は泣き出した。
そんな子ども達をジュリーは優しく抱きしめ、撫ぜる。
「放っておいたらこの子達も危ないかと思って、アタシが連れて逃げたの……」

あたしは憤りを感じていた。
人を人と思わないこの国のやり方に、腹が立ってしかたなかった。
多分レキもだろう。
レキにとっては色んな意味で他人事じゃない話だったから。

「でも、もう逃げられないかもしれないわ……
天馬騎士団(ペガサスナイツ)が出てきてしまったんですもの」

その言葉にあたし達は驚いた。
「……天馬騎士団って、ウェルハーン王家直属の!?」
「国まるごとで魔族狩りか……この国は、こんなに永い刻が過ぎても相変わらずだな……」
レキが溜息をつく。
「レキ、どうする気? あたしはほっとくことなんてムリ!」
「勿論、ほっとくつもりなんてないさ」
レキが頷いて辺りを見渡す。
「こいつらは騎士じゃないな。雇われ傭兵ってとこか?」
ゆっくりと一言一言話すレキを訝しげに見た男の表情が凍りつく。
「ま、まさか……!」
レキは、男に指一本触れてはいない。
指を少し動かして、自らの顔の前に持ってきただけだった。
「お、お前が……そうなのか!?」
男は真っ青な顔で呻いた。
「素直に教えてくれたら、命は取らないでやるよ?」
「あ、あいつらはここから北に進んだところにある湖の畔の砦に居る!!」
「本当?」
震えながら男は一気に喋る。
「嘘じゃねぇ! さぁ、約束だろ? 早く動けるようにしてくれ!!」
レキは男の言葉に薄く笑う。
「命は取らない……とは言ったけど、他に何か約束したかな?」
男は叫ぶ。
「このままじゃ死ねって言ってるのと変わらないじゃねぇか!」
「そう言ってるんだよ。そこで死んでいる仲間共々、森の獣の餌になればいい!」
男に言い捨てるとレキは、北に向かって歩き出した。

「あ、レキ、待って! あたしも行く!」
訳が分からないで呆然としているジュリーと子ども達に近づいて声を掛ける。
「あたし達、もう行くね」
あたしは鞄から、急いで紙切れを出して一筆書いて渡した。
「ここから東に進むとファールムゥグとの国境があるから、そこの兵士にこれを見せて」
そう言い残してあたしはレキを追って走り出した。

 


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