DARK HALF8







「…へっ?い、今何てっ!?」
思いがけない質問に、あたしはちょっと動揺が顔に出てしまった。
「何、それ?」
レキはそらっとぼけて聞き返している。
「私は過去に、君じゃないダークハーフに会った事がある」
「…レキさん以外に、ダークハーフがいるの?」
レキはあたしの顔を見て首を竦めた。
「そんな事聞かれても、自分には会えないから俺、ダークハーフに会った事ないしなぁ」
「あ、あたしもレキしか会った事なーい」
ここは誤魔化そう!
まあ、あたしがとぼけきれてない気もするけど…。

「…そうか、やっぱりそう簡単には話してくれないか。仕方ないな」
団長さんは、レキの瞳をじっと見つめた後、首を振りながらそう言って、
連れていた馬にまたがった。
「今回は諦めよう。だが、次にもし会う事があれば、その時は話してくれよ?」
「次があればね」
レキの言葉に、さわやかな微笑みを浮かべ、団長さんは言った。

「これから私は君達を捕える事が出来なかった件の責任を取る為に騎士団を辞める。
その後は旅に出ようと思ってるから、出会う機会はきっとあるさ」
軽ーく言っちゃってるけど、この人本気なのかな?
「本当に辞めちゃっていいの?団長になるのって大変だったんじゃないの?」
「十年前にダークハーフに会ってしまった時からずっと考えてた。
強くなりたい、と。今の私は、強くなった気がしていただけで、まだまだ井の中の蛙だった。
このまま騎士団にいても、ダークハーフに勝てる日は絶対に来ないって
君に負けて気付いたんだ。
だから旅に出る事で、家も国も捨てる事になるだろうがかまわない。
私がいなくても、家の後継ぎは弟がいるから安心だしね」
何かが吹っ切れたのか、団長さんの表情は明るい。
「気付かせてくれてありがとう。…ああ、そろそろ私は戻らないといけない」
「縁があったらまた会おうな」
「次に会う時は色々と話してもらうから、覚悟するんだな。……またな」
そう言って、団長さんは馬を走らせた。
遠ざかる馬の蹄の音と、団長さんの後ろ姿を見送って、あたしはレキに問い掛けてみた。
「結構、団長さんの事気に入ってた?」
「ん?その事は後でな。…それより、ジュリー」
突然話し掛けられて、ジュリーは驚いた顔をしている。
「な、何?」
レキは空を指差した。
「もう日が暮れる。早いとこあのチビ達を迎えに行った方がいいんじゃない?」
その言葉に辺りを見回して驚いた。
「もうこんな時間!?」
いつの間にか、頭の上にあった太陽は地平線に少し隠れ始め、空は茜色に染まっていた。
「そうね。何か無茶な事とかしちゃう前に迎えに行かないと…」
そう言ってジュリーは深々と頭を下げた。

「アタシ、この恩を絶対に忘れません。
レキさん、セリアさん、本当に有難うございました」
畏まってお礼をするジュリーにレキは手をぱたぱた振った。
「いいからいいから、顔上げなよ」
「そうそう、気にしないでいいよ!………あたし、結局何もしてないし…」
視線を逸らしたあたしに、ジュリーは首を横に振る。
「そんな事ありません!セリアさんはアタシが魔族だからって差別しませんでした。
アタシ、嬉しかったんですよ!?」
「……そう?それならよかった……あっ、それよりも、ジュリー!」
「な、何?セリアさん」
「それ!さん付け!『セリア』でいいよ。もう友達でしょ?」
「俺の事も『レキ』で構わないぜ」
あたし達の言葉にジュリーはちょっと戸惑いながらも、照れながら頷いた。

「…レキ、セリア、本当にありがとう。
アタシ、これからあの子達を連れてファールムゥグへ行ってみるわ。
それでね、もし、二人に何か困った事があったら知らせてね?
アタシ、二人の力になりたいの。…友達だもん」
顔を見合わせて笑うあたし達を見て、レキも笑みを浮かべる。
「ありがと、ジュリー。今度ファールムゥグに戻った時は、絶対会いに行くから!」
「うん、アタシ待ってる!じゃあ、もう行くわ。…またね」
「元気でな」
「またねー!」
手を振りながら遠ざかるジュリーが見えなくなるまで見送って、
あたしは少し寂しく思いながら振り返していた手を下ろした。

「…………」
「ん?どうしたの?」
気付くとレキは、ジュリーが去った方とは違う方向を見つめている。
「…………」
「何見てるの?」
レキの視線を辿ってみたけど木があるくらいで変わった物は見当たらない。

「………出てきたらどうだ?」







前へ   次へ
次でラストです!!!




Home   Novel



SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送